標準見積書の活用で法定福利費確保
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国土交通省が昨年10月に公表した「最近の建設業を巡る状況について」報告書によると、建設投資額は、ピーク時(平成4年度)の約84兆円から平成23年度には約42兆円まで落ち込んだが、令和元年度までに約58兆円まで持ち直し、令和2年度は約55兆円となる見通しだ。これは、ピーク時の約66%である。
令和2年度末の建設業者数は約47万業者、建設業就業者数は429万人となった。建設業者はピーク時(平成11年度末)から約21%減、建設業就業者はピーク時(平成9年平均)から約28%減少している。
建設業就業者については、55歳以上の占める割合が約36%、29歳以下の割合が約12%となっており、高齢化が進行している。建設業就業者のうち技能者はピーク時(平成9年度)455万人だったが、徐々に減少し、令和2年度には約318万人となった。
建設業における働き方の現状を年間実労働時間の推移でみると、10年ほど前と比べて全産業調査では全産業が約266時間減少しているなか、建設業は約40時間減少と減少幅が小さい。平成9年度の年間実労働時間が2026時間だったのに比べ、令和2年度は1985時間となった。また、建設業における休日の状況を見ると、建設工事全体では技術者の約4割が4週4休以下で就業している状況であり、4週8休は2割程度となっている。
賃金について、建設業男性全労働者の年間賃金総支給額(決まって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額)の推移では、平成24年に483万1700円となっていた支給額が平成元年では572万9900円となった。上昇率は18.6%である。
◇新・担い手3法の施行
平成26年に公共工事品確法と建設業法・公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律を一体として改正し、適正な利潤を確保できるよう予定価格を適正に設定することや、ダンピング対策を徹底することなど、建設業の担い手の中長期的な育成・確保のための基本理念や具体的措置を規程した結果、予定価格の適正な設定や歩切りの根絶、価格のダンピング対策の強化に成果があり、建設業の就業者数の減少に歯止めがかかった。
改正建設業法により、通常必要と認められる期間に比べ著しく短い工期による請負契約の締結を禁止し、違反した場合は、国交大臣等による勧告・公表が可能になった。また、中央建設業審議会が工期に関する基準を作成・勧告できることとされた。
直轄工事では、週休2日を確保できるよう適正な工期設定や経費補正を実施。令和6年4月からは、建設業においても罰則付きの時間外労働規則が適用されることから計画的に週休2日を推進する。
令和5年度には、原則としてすべての工事で発注者指定方式により週休2日を確保することを目指して取組みを順次拡大する。
◇技能労働者の賃金引上げに向けた取組み各団体の動き
◎日本建設業連合会
一次下請への見積依頼に際して、概ね2%以上の賃金上昇の趣旨にかなう適切な労務費を内訳明示した見積書の提出要請を徹底し、当該見積を確認したうえでこれを尊重する。
◎全国中小建設業協会
当分の間、2パーセント以上の労務費の引上げの取組みを宣言する。
◎全国建設業協会
概ね2%以上の賃上げを目指し、下請契約での配慮、下請会社への指導等の取組みを進める。
◎建設産業専門団体連合会
職人の賃金を上げていくことについて賛同。賃金アップ分の原資を確実に獲得することを第一の目標と定め、労務費には賃金アップ分を反映させた額を計上し、法定福利費等必要な費用の内訳を明示した見積書を作成、当該見積書を尊重した請負契約を締結するよう理解を求めていく。
▽標準見積書の活用による労務費・法定福利費の確保
標準見積書による労務費及び法定福利費の確保について、元請・下請・発注者に対して取組みを要請。地方公共団体に対し、請負代金内訳書に明示される法定福利費の内訳額の確認等を要請し、実効性を図る。その際、建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価を見据え、技能者の地位や能力に応じた労務費の見積とその尊重についても推進。
・下請への要請
労務費や法定福利費の内訳明示等。CCUSの普及を見据え能力や地位の反映を推奨。
〇法定福利費は労務費総額を算出し、保険料率を乗じる方法を基本とする。
〇出来る限り、想定人工の積み上げによる労務費の積算と労務費総額の明示に努める。
〇その際、技能者の地位や能力を踏まえ具体的に示すことが望ましい。
・元請への要請
法定福利費および労務費の見積の尊重
〇法定福利費は必要な労務費とあわせて適正な額を確保。
〇下請に対して法定福利費が明示された見積書の提出を求め、当該見積を尊重する。労務費総額についても同様。
〇想定人工の積み上げによる積算、技能者の地位や能力に応じた見積がされている場合は特に尊重する。
〇元請が自社独自の様式を用いる場合も専門工事業団体の標準見積書との整合に留意。
・公共発注者の確認による履行強化(地方公共団体に対して要請)
〇請負代金内訳書の法定福利費の内訳明示の徹底。
〇公共発注者による法定福利費の内訳額の確認。
予定価格の積算から合理的に推計される率を参考に確認。
〇内訳額と想定額が乖離するときは、元請に対して算定根拠の確認を指示。
少なくとも1/2以上であること。下請から法定福利費の見積書の提出があることを確認、等。
・民間発注者への要請
〇法定福利費およびその適正な支払いの前提となる労務費等の必要経費を見込んだ発注。
〇法定福利費が着実に確保されるよう見積・契約等の際に配慮すること。
=以下省略=
東京室内装飾新聞(第668号)より引用