4月より事前調査報告が義務化 来年10月から資格者による調査が義務付け

  • HOME
  • 4月より事前調査報告が義務化 来年10月から資格者による調査が義務付け

 
  大気汚染防止法、および労働安全衛生法・石綿障害予防規則(石綿則)の改正により、石綿(アスベスト)関連規制が、環境面と労働安全面の両面から強化され、2021年より順次施工されている。4月からはリフォーム事業にも関連性が高い事前調査報告の義務化もスタート、さらに来年10月からはその事前調査の有資格者での実施義務化も行われる。それに向けて今号ではアスベスト関連規制の内容を整理した。

 アスベストは、空気中の浮遊物を吸入してしまうことで悪性中皮腫や肺がんなど深刻な健康被害を引き起こす危険な物質である。そのため2006年9月から輸入、製造、使用などが完全に禁止されたが、それ以前に着工した建築物ではアスベストが使用されている可能性があり、解体・改修工事などで空気中に粉塵が飛散してしまう恐れがある。
 そこで2005年7月に石綿障害予防規則が制定され、解体・改修工事に関する規制が設けられ、建設従事者の石綿暴露防止対策が行われた。
 一方の大気汚染防止法は、広く国民の健康を保護することを目的に1997年4月に施行されたものだ。
 この2つの法律でアスベストは規制されていたが、実際には作業開始前の石綿含有の有無の事前調査が適切に行われていないために取り残してしまう、あるいは規制対象外の石綿含有建材(レベル3・成形板等)の除去などによってアスベストが飛散してしまうといった事例が数多く報告されていた。今回の法改正は、それらの課題に対応したものだ。
 その改正のポイントであるが、まずは規制対象がすべての石綿含有建材に拡大された点だ。これまで吹付け石綿(レベル1)、石綿含有断熱材等(レベル2)が対象だったが、内装資材も含めた石綿含有建材(レベル3)に拡大された。これにより規制対象は現状の5~20倍に拡大する見込みである(2021年4月施行済)。
 次に事前調査の信頼性確保のため、すべての建築物等の解体・改修工事において事前調査を行い、発注者(施主)に対して書面で説明するとともに工事現場に掲示、その事前調査の記録も3年間保存することが義務付けられた。さらに一定規模以上の解体工事(80㎡以上)、改修工事(請負金額100万円以上)は石綿含有建材の有無にかかわらず、調査結果の都道府県等への報告(電子システムで届出)も義務付けられた。
 改修工事で100万円となると、多くのリフォーム工事が対象となるためリフォーム事業者も対応が必要となる。この事前調査報告が今年の4月から義務化されるのだ。
 また事前調査の方法についても法制化され、「一定の知見を有する者」による書面調査、現地調査が義務付けられた。「一定の知見を有する者」については、来年10月からは厚生労働大臣が定める講習を終了した資格者(石綿含有建材調査者)であることが義務付けられる。
 さらに、除去工事が終わって作業場の隔離を解く前に、資格者によるアスベストの取り残しの有無の確認を義務付ける他、作業の実施状況を写真や動画などで撮影し、その記録の3年間保存も義務付けられた(2021年4月施行済)。
 この他、罰則規定も強化、隔離等をせずに吹付け石綿等の除去作業を行った者に対する直接罰(3月以下の懲役、または30万円以下の罰金)が創設された。
 以上のように非常に強化されたアスベスト関連規制。リフォーム工事を行う事業者は、内容をしっかり把握し4月からの事前調査報告の義務化、そして来年10月に向けた資格者養成に取り組んでいきたい。
 なお、下記では日リ協がリフォームに関するアスベスト対策をQ&A形式でまとめているので参照されたい。



 
 

教えて!! 改装・リフォームのアスベスト対策 By日リ協

 
 アスベストは肺がんや中皮腫といった重い病気を引き起こすなど人体に深刻な健康被害を及ぼす原因となります。国は今後の被害を防止するため、大変厳しい規制を設けました。
 アスベストはスレート屋根や天井の成形板、内装や外壁材、断熱材や吸音材、柱や簗の吹き付け材、管材パッキンなど、建物のさまざまな箇所に使われていました。こうしたことから、アスベストを含む建物において改装・リフォーム工事を行うにあたっては、アスベストの飛散を防止して健康や環境に被害を与えることのないよう、法律で定められた手順を踏み、安全に進める必要があります。
 今回は組合員の皆様から多く寄せられるご質問にお答えします。ほぼすべての組合員が該当しますのでご理解と取り組みをお願い致します。



Q1 なぜ厳しい法改正がされたの?
A アスベストを含んだ国内の建物の多くが解体・改装のピーク時期を迎えるからです。

Q2 内装はレベル3と言われるけど、それは何のこと?​
A レベル1は主に鉄骨造の柱や簗に耐火被覆材など発塵性が著しく高いもの、レベル2は主に耐火被塵材やボイラー、空調設備のダクトの保温材など、そしてレベル3は天井や壁下地に使用されている石綿含有成形板や石膏ボード、石綿スレート、壁紙やクッションフロア、パッキンなど比較的発塵性が低いもので、内装事業者が多く取扱いするものです。​

Q3 アスベスト含有建材の撤去作業は特別な方法が必要なの?
A アスベスト含有物とそれ以外を同時に撤去することは平成18年以降禁止されていて、まずは含有建材のみを破壊せずに取り外すことや、湿潤化のうえ除去するなど一定のルールがあります。その後、含有されていない造作・仕上げを撤去する工程です。


Q4 事前調査が義務付けられたのはなぜ?
A レベル3の適切な工程を踏むには、まずはアスベスト含有建材等の存在を事前に調べなければならないからです。

Q5 今年の4月から事前調査の結果を報告しなければならないのは本当なの?
A 法令ではすべての改装・リフォームにおいて事前調査すべきですが、特に元請けとして請負金額が税込100万円以上では都道府県・労基に調査結果の報告をパソコン・スマホのWEB上で行わなければなりません。報告方法の詳細は「石綿事前調査結果システム」でWEB検索してみてください。

Q6 事前調査には資格が必要なの?
A 的確な調査が行える専門家として「石綿建材含有調査者」を新設しました。調査者は現時点で「一般調査者」(建築物全般が対象)と「一戸建」(戸建て住宅及びマンションの専有住居が対象)の2種類です。特定調査者は特殊建築物や船舶など高度な専門性が求められ、建築・内装の分野ではあまり必要ありません。

Q7 調査者資格を取るにはどうすればいいの?

A 全国に60超の講習・試験を実施している機関があり、そこで開催する資格取得講習に出席・受験することで資格が得られます。WEBで検索して最寄りの会場で2日間(一般は11時間、一戸建は7時間)の講義を受けた後、筆記試験で60%以上正解すれば合格となります。

Q8 講習実施機関によって講義や試験の内容は違うの?
A  いずれの機関も、厚労省・国交省・環境省の「建築物石綿含有建材調査者講習登録規程」に基づくテキストを使用します。筆記試験内容は同規程による一定のルールに基づき、各機関で個別に作成されているため統一されていません。但し、難易度などはほぼ変わりありません。(合格率70~80%)。また受講料も一般調査者であれば55,000円がほぼ共通している価格です。

Q9 講習と試験は別々の日に行うの?
A 実施機関によって異なります。2日間の講習の直後に同日実施される機関もあれば、しっかり試験準備ができるように半月~1ヵ月後に行う機関もあります。WEBで開催要領をご確認ください。

Q10 小規模工事店でもこの資格は取った方がいいの?
A 住宅だけでなく、オフィスビルや各種施設などの改装工事を元請け(発注者から直接受注)される現場が年間に複数件見込まれる事業者は、社内に1名は資格者を置かれた方が良いです。もし、下請けのみであれば必要はありません。ただし、万一の場合は外部調査会社へ外注してください。

Q11 講習を受けることができる要件はあるの?
A 学校教育で建築知識を持ち実務経験がある方(学校種類により年数設定)、石綿作業主任者の資格者、学歴不問の実務経歴11年以上の方など、一定の要件があります。学歴関係が無ければお奨めは、先ず石綿作業主任者をお取りいただき、続けて調査者資格を取られることです。もちろん長年の経験者であれば直接に受けて頂けます。

Q12  石綿作業主任者はどうすれば取ることができるの?

A 全国の建炎防をはじめ多数の講習機関がありますので、WEBで最寄りの会場を探してお申込みください。この技能講習は2日間(10時間)の受講と終了試験の合格が必要です。受講料は13,000~15,000円程度です。

Q13 石綿作業における必要な資格は他にもあるの?
A 石綿等を含んだ建築物等の解体等の作業を行う際には、石綿等の除去・封じ込め・囲い込み等の措置を講じる必要があり、労働安全衛生法令等によって、石綿取扱作業従事者は4.5時間以上の特別教育を受けなければなりません。なお特別教育は修了試験の義務付けはありません。

Q14 石綿作業の関連資格は3つあるようですが、それぞれの役割はなに?
A 簡単に言うと、①一般石綿含有建材調査者は事前の調査と報告、②石綿作業主任者は作業の管理者、③石綿作業従事者特別教育修了者は適切な作業者、と言えるでしょう。

Q15 事前調査を行うのは難しいの?
A 対象物件によりさまざまですが、基本は建築時期と石綿含有建材データベース(WEB)の照合や建築図面を基にした書面調査を行い、次に現地で目視する2段階です。ただし、改装ではサンプル採取が難しいため「含有が存在する”みなし”」とすることが多いはずです。それらを書式に沿ってまとめるだけですので、若干の手間は掛かりますが総じて難しいものとは思われません。

Q16 それならば作業などの方が注意しなければならないのね!
A レベル3のルールに従って、作業服・マスクの着用、適切な除去・封じ込め作業、適切な廃棄処分、記録作成と保管、作業者の健康管理などを行わなければアスベスト被爆を防げません。資格者による調査も大切ですが、作業関連に注意と義務遂行の積極姿勢が求められています。

Q17 一般社会には石綿に関する働きはあるの?
A 法令では建築物の所有者に対する規制が定められており、工事業者に対して義務の履行を求めています。マンション管理組合でも調査報告や作業計画書の提出を求めはじめています。一方、調査費や適切な工事経費等の支払い義務についても規定されています。今後は事業者側の諸費用の設定や見積り方法についても検討を急がなければなりません。




日装連新聞(第537号)より引用