インテリアで健康に 医学的視点で空間をデザイン

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 インテリアと医療を結び付け、健康に暮らせる居住空間をデザインする「アクティブ・ケア」を発信する日本インテリア健康学協会。代表理事の尾田恵氏に、東装協広報委員会の三井結美子委員が聞いた。

――なぜ、「健康」とインテリアを結びつけようと思われたのでしょうか。
 インテリアコーディネーターとして仕事をするなかで、10年ほど前に出会った神経内科の先生から「片頭痛は生活環境を変えることで軽減される」と聞きました。片頭痛は光過敏症によって起きる場合も多く、過敏症の人が楽になるように部屋の光を和らげるのはインテリアでできる、と思いました。そこから、コーディネーターとして健康への悪影響を未然にケアすることができるのでは、インテリアをもっと健康に役立てられるのではと考えるようになりました。今までインテリアは、トレンドを追うとか素敵とか感覚論による評価が主でしたけど、それに留まらず、光や音などの過敏症で片頭痛に悩む人の症状緩和のためにも役立てられるんだと。そして、「健康」を軸にインテリアを考える領域があっていい、将来的にはインテリアで健康を考える学問ができたらいいなと思うに至り、独自に「インテリア健康学」という言葉も作りました。

――2018年に日本インテリア健康学協会を設立されました。どんな活動をされていますか?
 私たちは、インテリアは安心で安全に暮らせる生活空間を整えることだと捉えて、照明・音・においなど健康に影響する要素に配慮し医学的な視点で居住空間をはじめとした「生活環境」をデザインすることを「アクティブ・ケア」と名付けています。「アクティブ・ケア」とは、自分自身の健康を守り、様々な症状と上手に向き合う、前向きで積極性のある健康管理の手法です。医療分野の方たちと連携を図り、その考えに基づいたセミナーや勉強会を開催し、情報発信と収集、ネットワークの構築に取り組んでいます。

――内装が「健康」に役立つのですね。
 照明が光過敏を誘因したり、音やにおいが引き金となって片頭痛を起こす場合もあります。それらの刺激を軽減するために、間接照明で光刺激を和らげたり、音やにおいに配慮した壁や床にする。光環境も含めそこに内装が関係してきます。これからは、「健康」を軸に壁材や床材、ファブリックを選択し、生活環境・空間をきちんと作ることで睡眠をサポートするとか、疾患を予防していくといった役割を担う内装が大事になります。

――具体的に、どのような事例がありますか。
 以前、「眠れる家の妻」というコンセプト名のモデルルームを作りました。そこは”ただいま”と夜帰った瞬間から”眠り”が始まるんです。人間の体内サイクルでは、朝起きてから15時間後にメラトニンという眠りホルモンが出るようになっているんですが、夜の明るい光環境はそれをシャットアウトしてしまう。だから帰宅した瞬間から自然と眠りモードになっていくように配慮し、玄関やリビングの照明に工夫をしました。そうすることで住まいを、自然な睡眠を確保する場所に近づけることができます。また、獨協医科大学の新看護師寮では、一般の部屋と比べてコストを変えずに片頭痛に配慮した内装の部屋を作りました。そこで旧寮の時と新寮への引越し後とを比べて片頭痛の症状が軽くなるのかという実証を行いましたが、片頭痛に悩んでいた看護師さんの頭痛症状が軽減し薬の量が3分の1になったという結果が出ています。

――インテリアと医療、どんな連携を。
 においとか光とかを単体で捉え、それが健康にどう影響するかといった医学的な研究はいろいろあります。私はそれらの成果を空間にあてはめて住環境を作る、つまり、単体の研究を統合しひとつの空間を構築して「健康にはこうしたらいいのでは」と実生活に寄り添う提案ができればいいと思っています。医療の分野で様々な研究をされている先生方の賛同をいただいてセミナーを企画し、生活環境から元気になれるという発信をしています。その際、医療分野との連携は重要です。医学ではエビデンスが日々進化していますのでアクティブ・ケアも進化させながら正しい情報を伝えていかなければと思っています。

――全国に6万人いるというコーディネーターと是非連携を深めていただきたいですね。
 バリアフリーという考え方は普及しています。同じように、健康に暮らすためにインテリアを考えるという新しい健康管理の手法を広く仲間たちに伝えていきたいですね。1人では限界がありますが、仲間を増やせば可能性も広がります。そして、インテリアには、病気予防と安心して暮らせる空間を実現できる「力」があると言うことを多くの皆さんに知ってほしいと思っています。

――有難うございました。