今年4月より「本運用」をスタート
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建設技能者の保有資格や社会保険加入状況、就業履歴などを業界横断的に登録・蓄積する「建設キャリアアップシステム」(運営主体・一般財団法人建設業振興基金)が、今年1月からはじまった「限定運用」を経て、いよいよ4月より「本運用」をスタートする。
建設業界一体となって進められている「建設キャリアアップシステム」の「本運用」を控え、全体像や登録方法、利用方法について解説する。
建設技能者不足が深刻化する中、担い手確保に向けた技能者の処遇改善が急務となっている。
処遇改善には、技能者それぞれの能力や経験の見える化が第一歩となってくるが、それを業界統一ルールで蓄積するのが「建設キャリアアップシステム」である。
まずはその全体像を紹介すると、事前に技能者が自身の情報(住所・氏名・生年月日・職種・所属事業者・社会保険加入状況・保有資格・講習履歴他)をシステムに登録し「建設キャリアアップカード」を入手、そのカードを現場入場の際に、現場に設置されたカードリーダーで読み込むと、その現場での就業履歴が蓄積されるようになる。これにより就業履歴が経験として蓄積され、登録済みの資格や講習履歴などと併せて、その技能者の能力や経験が可視化されるというものだ。
また同システムには事業者も登録する必要があるが、事業者にとっても優秀な技能者が所属していることが明確になれば、元請事業者から高く評価されることになる。
このように考え方はいたってシンプルだが、システム自体は構成が複雑のため理解が難しく、敬遠してしまいがちだ。しかしながら、建設業界全体が処遇改善に向けて「建設キャリアアップシステム」を積極的に活用していく流れの中で、内装仕上業界も前向きに取り組む必要がある。
まずは事業者登録から一人親方は事業者、技能者両方の登録が必要
それでは、利用開始するまでの手順を具体的に説明したい。
システムへの登録は事業者と技能者の2つがあるが、第1ステップとして事業者登録を行い、事業者IDを取得することが推奨されている。もちろん技能者登録を先行することもできるが、登録項目に「所属事業者」があり、それが未登録の場合はその情報について再度登録作業を行う必要があるからだ。
また技能者登録は、所属事業者など関係事業者が代行申請できるようになっている。そのためにも事業者登録を先に行うことが望ましいとのことだ。
登録に必要な書類は公式ホームページなどで入手できる。ホームページ上では登録方法を分かりやすく解説した動画や、問い合わせの多い質問についてQ&A形式で公開している。
その後、第2ステップとして技能者情報を登録(本人、もしくは所属事業者などの代行申請)する。その際は本人確認に必要な書類(運転免許証など)の写しの提出が必要となる。登録を申請し審査が終了すると技能者IDが付与され、「建設キャリアアップカード」が発行される。
カードの種類は、通常の白カードとゴールドカードの2種類となる。ゴールドカードは登録基幹技能者が対象となる(今後は白、青、シルバー、ゴールドの4段階の細分化される予定)。
なお登録申請はインターネット、郵送、受付窓口にて対応している。各県建設業協会の受付窓口については、現在全国43か所設置されている。この他、全建総連の各支部などにも設置が進められている(詳細は公式ホームページで公開中)。
登録料金は、事業者の場合は資本金500万円未満が3000円(個人事業主も同じ額)、1000万円未満が6000円、2000万円未満が1万2000円、1億円以上3億円未満が6万円など事業規模に応じて細かく分かれている(更新は5年ごと)。技能者の場合はインターネット申請が2500円、郵送・窓口が3500円(有効期間10年)となっている。
注意が必要なのが一人親方のケースである。一人親方は事業者登録と技能者登録の両方を行う必要がある。ただし、一人親方の場合は、事業者登録料は無料となる。
下請事業者は施工体制の登録が必要
続いて実際の現場での運用についてであるが、ここでは主に事業者による作業が中心となる。
まずは元請事業者がシステムに現場・契約情報を登録するところからはじまる。登録する現場は新築、リフォーム、修繕など規模や工事の種類に関わらずすべての建設工事が対象となる。
次に、その現場情報に対して元請事業者と下請事業者が協力して施工体制を登録する。その際に、作業員名簿として技能者の職種や立場(職長、班長など)、作業内容などを詳しく登録しておくと、より詳細な就業履歴が技能者に蓄積されるようになる。
最後に元請事業者が、現場にカードリーダーを設置する。カードリーダーに接続する機器は就業履歴登録アプリ「建レコ」がインストールされたパソコン、iPhone、iPadのいずれか。現場ではインターネット接続環境が必要となる。
そして工事がはじまると、技能者は現場に設置されたカードリーダーにカードをかざすということになる。
さて、下請事業者として現場に入る場合には、施工体制の登録だけで利益が可能となるが、日装連組合員には、元請けとしてリフォーム工事を請け負う事業者も数多い。その場合は、システムへの現場・契約情報登録をはじめ、施工体制の登録、そして現場でのカードリーダー設置までを行わなくてはならない。
こうした作業は手間にもなるが、今後「建設キャリアアップシステム」が普及していき、履歴をしっかり残したいという下請事業者や技能者が増加してくれば、間違いなく対応に迫られるようになるだろう。
ちなみに、一人親方が元請けとなる場合も、事業者として現場登録を行い施工体制として自らを登録すれば、技能者として就業履歴を残すことができる。
なお施工体制はパターン化してデータ保存しておくことができるため、現場を重ねていくことで作業はよりスムーズになっていくはずだ。
建設業振興基金では、現場での運用方法をまとめたマニュアルを3月に公開する予定である。同マニュアルは大手事業者の複雑な現場体制なども踏まえたものとなっているが、今後は中小事業者向けの簡略版を作成する計画もあるとのことだ。
1月よりスタートした「限定運用」は、開始する現場が着実に増加し、有意義な検証が行われているという。昨年4月より開始した登録申請受付も、現在は「本運用」に向け急激に増加中で、「建設キャリアアップシステム」に対する関心度は急速に高まっている。
下請事業者として技能者の確保・育成、そして元請事業者としては下請事業者の関係強化。それぞれの立場から、「建設キャリアアップシステム」に積極的に取り組んでいきたい。