壁紙、プラスチック床材、カーペットなどの技能日本一が決定

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 オンラインIBNで既報の通り、さまざまな分野の技能日本一を決める「第30回技能グランプリ-天皇陛下御在位30周年記念大会」(主催・厚生労働省、中央職業能力開発協会、(一社)全国技能士会連合会)が、さる3月1日~4日の期間、兵庫県の神戸国際展示場をメイン会場とする計7会場で開催、全30業種から計533名の技能者が参加した。
 インテリア・内装関連としては、壁装(参加者32名)、プラスチック系床仕上げ(同16名)、カーペット系床仕上げ(同6名)の3部門の競技が、神戸国際展示にて行われた(競技日は3月2日)。
 「技能グランプリ」とは、建築関連をはじめ料理、服飾、機械、貴金属、彫刻、広告製作などさまざまな分野におけるトップ技能者が、日本一を競い合う全国規模の競技大会として隔年開催されているもの。技能系競技会としては、「技能五輪」も有名だが、「技能五輪」が青年技能者(原則23歳以下)を対象としているのに対して、「技能グランプリ」では年齢制限はないため、文字通り日本最高峰の技能者を決める競技大会となっている。

 

競技の盛り上がり方が業界の勢いのバロメーター

   
 さて、「技能グランプリ」の最大の見どころは最高峰の技能の競演ということになるが、その前に少し視点を変えてみてみると、競技の盛り上がり方自体が、その業種が属する業界の市場規模や勢いを示すバロメーターのようで非常に興味深い。
 今回、インテリア・内装関連の競技が行われた神戸国際展示場では、その他にも建築大工、建具、家具、タイル張り、表具、畳製作、寝具、フラワー装飾、和裁、石工、かわらぶき、婦人服製作、紳士服製作、ペイント仕上げ広告美術、粘着シート仕上げ広告美術、機械組立てといった職種で競技が行われていた。
 その中でも参加競技者数や年齢層などで、職種ごとに大きな違いがあった。建築大工や婦人服製作、フラワー装飾などは競技者数も多く市場規模の大きさが感じられる。また機械組立ては若手技能者が中心で、観戦する人々もたくさんいて勢いが感じられた。
 その一方、ペイント仕上げ広告美術は競技者が少ない上に高齢化が進んでいた。すでに看板製作はデジタルプリント技術に置き換わってしまい需要がなくなっているということだろう。伝統的手法でスーツを仕立てる紳士服製作も同様に高齢化が顕著だった。
 そんな中で、意外にも、といったら失礼だが、活気があったのが畳製作である。昔ながらの藁床からつくり上げる技術が必要かどうかはさておき、非常に多くの競技者が技能を競っていた。首都圏では和室の減少にともない畳需要は低迷しているが、地方ではまだまだニーズを底堅いということだろう。
 そうした観点から捉えると、インテリア業界として心配されるのがカーペット系床仕上げである。競技者は6名(前回大会では5名)と全体でも最小に近い人数だった。
 カーペットはインテリア業界にとって大切な商材である。住宅用途を考えれば、敷き込みこそその魅力がもっとも発揮できるものであるが、その需要の拡大を目指すにしても、それ以前に施工技術自体が勢いを失っている状態にある。カーペット関連の技能者をどうやって育てていくのか、さらにはいかにして残していくのかは、需要拡大以上に大きな課題といえる。
 


 

活気あふれる壁紙・トップ技能者による美しい所作も見どころ

   
 このように業界ごとの事情を垣間見ることができる「技能グランプリ」であるが、その中でもトップクラスの活気を誇っていたのが壁装であった。競技者数も多く、それに比例して観戦する関係者も非常に多かった。また競技自体も、競技台が立体的でそこに貼られる商材もカラフルだったことから、競技が進むにつれて華やかな印象が増していった。
 それでは、その壁装での競技内容はどのようなものかというと、A・B・C面の3面に分かれた競技台に織物壁紙、塩ビ壁紙、紙壁紙、化粧フィルムなどを、それぞれの特性に合わせて、制限時間内(4時間半)で施工していくというものだ。通常の現場ではありえない細かな貼り合わせが多数あり、そのジョイントの美しさとともに、制限時間内におさめるためのスピードが求められる。
 そうした難易度の高い課題を前に、日本トップクラスの技能者が技を競い合う。その緊張感たるや凄まじいものがあるが、記者のような素人には技術レベルの判別はできない。しかしながら、自らもプロである観戦者たちの目には技術の差は明白のようで、開始してしばらくすると、「『〇番』はうまい」などとひそひそと言い合う声が聞こえてくる。そうした競技者の前にはだんだんと人垣ができるようになる。
 観戦者が注目する競技者を中心に見はじめると、なるほど技術の差が感じられるようになってきた。競技台までの距離が遠くて正確性はわからないが、とにかく作業スピードが早い。そして所作がかっこいいのである。 刷毛で糊を塗布する仕草一つとっても美しい。そういった、仕上げとは異なる部分で目立つ競技者が幾人かいた。
 現在、インテリア・内装業界では技能者不足が大きな問題になっている。賃金や処遇の改善によってその解決を図ろうとするのは当然のことだが、こうしたトップ技能者の所作の美しさをもっとPRして、若者が憧れる職業にするというアプローチも大切なのかもしれない。
 ちなみに、「プラスチック系床仕上げ」には床材関連として初の女性競技者が出場し話題となっていたが、今後は女性技能者の育成も課題となるだろう。
 こうして時間内に競技を終え充実感に浸る競技者がいる一方、終了間際まであきらめずに作業をし続けるも時間内に終わらない競技者も数多くいた。その悔しそうな顔も強く印象に残った。
 いろいろなことを感じた「技能グランプリ」であった。
 3月4日に発表された壁装、プラスチック系床仕上げ、カーペット系床仕上げの入賞者は次の通り。(敬称略)
 壁紙 金賞=髙橋耕太郎(秋田県) ▽銀賞=五十嵐俊之(神奈川県)・人見友昭(神奈川県)、小林正行(長野県) ▽銅賞=宮崎直人(北海道)、二瓶幸一(京都府) ▽敢闘賞=西村慎司(大阪府)、菅原智宏(山形県)、中野正和(東京都)、池田謙志(島根県)、林教幸(京都府)、清水拓郎(滋賀県)、多久和聡(神奈川県)
  プラスチック系床仕上げ 金賞=北本信也(大阪府) ▽銀賞=髙橋領一(東京都)、岡田啓介(長野県) ▽銅賞=山本一幸(神奈川県)、木内祐太(長野県) ▽敢闘賞=中村昌士(東京都)、永田信行(兵庫県)、畠山和大(愛知県)
 カーペット系床仕上げ 金賞=宮本友幸 ▽銀賞=髙橋祐哉(東京都) ▽銅賞=坂井清和(東京都)