建設技能者の現状

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 まず建設業を取り巻く環境についてですが、建設業の就業者数がピークだった平成8年と比較すると、現在は3~4割減少しています。
 もう一つの問題が、建設投資が低調だった平成21~22年頃と比較して、現在は約1.4倍まで膨らんでいますが、それにも関わらず技能者数がほとんど変わっていないということです。その間、建築資材や労務費は上昇していますから、実際の仕事量の増加はそこまでではありませんが、いずれにせよ以前より多くの仕事量を同じ人員で対応していることになります。
 そして、それを支えている人たちは高齢化が進んでいます。全建設技能者のうち約4分の1が60歳以上で、一方30歳未満は8分の1という状況です。とにかく若い人が建設業界に入ってきてくれない。入ったとしても定着しないというのが現実です。
 その理由の一つが給料です。7年連続で設計労務単価を上げ、一定の効果はでていますが全産業と比較するとまだまだ低い状況にあります。
 年齢別の賃金のピークをみても、製造業が50~54歳なのに対して、建設業は45~49歳となっています。これは体力のピークが賃金のピークになっていて、経験が賃金に反映されにくいことを表しています。また労働時間も他産業より長く、休日も出勤するのが当たり前です。今どきの若い人は給料よりも休日を重視する傾向が強いですから、こうした労働環境も若い人が入職しない理由となっています。
 このような状況を改善するために、昨年「建設業働き方改革プログラム」を策定し、①長時間労働の是正、②給与・社会保障、③生産性向上という3つの施策を進めてきました。
 例えば、社会保険加入については、当初はできるはずがないと言われていましたが劇的に改善しました。今後、社会保険未加入業者は建設業許可が取得できなくなるという形に進んでいきます。その他の施策も着実に進めていくつもりです。

 

外国人材の受け入れ

   ここまでは日本人の処遇を改善することで人材確保を進めようということですが、それでもなお人材が不足するのが実情です。それを補うのが外国人材です(図1参照)。
 外国人材の受入れについては、まず「技能実習生」という制度があります。これはベトナム、フィリピン、中国、インドネシアなどから日本に来ていただき、技術を身につけて母国に帰国し、その技術を発揮していただくという、あくまで技術移転の制度です。
 もう一つが、東京オリンピックまでの一時的な建設需要増大に対応するために2022年末までの時限措置として開始した「外国人建設就労者受入事業」があります。
 そして今回、新制度として創設された新たな在留資格が特定技能1号、特定技能2号です。1号は在留資格が5年で家族の帯同は不可、2号は在留資格の更新が無制限で家族帯同もできるというものです。ただし仕事を続けることが条件です。
 現在、建設業に従事する外国人は約7万人です。その大半は技能実習生で、建設就労者は5千名弱となっています。
 国籍はベトナムが全体の半分くらいで、中国がそのまた半分、さらにその半分がフィリピン、インドネシアという状況です。職種では鉄筋施工、とび、建築大工といった労働環境の厳しいところが多くなっています。外国人を受け入れないと成り立たないためですね。
 例えば、ベトナム人の場合、ベトナム国内での月給は約2万円です。技能実習生は日本語教育を受けるケースが多く、そのために36万円という多額の借金をします。
 その中で問題となっているのが技能実習生の失踪です。実は失踪は建設業がもっとも多くなっています。技能実習生全体のうち建設業の割合は約1割ですが、失踪者は4割になります。その理由が日給月給制です。日給月給制では収入が安定しませんから、失踪して他に稼げる仕事をはじめてしまうわけです。
 今回の特定技能1号、2号を受け入れるにあたっては、とにかく失踪者を出さないことを考えて制度設計をしました。
 本来、入国審査(法務大臣)の前に業所管大臣のチェックはありませんが、今回は国土交通大臣による審査を行います。建設業法の許可、建設キャリアアップシステムへの登録、特定技能外国人受入事業実施法人への加入、日本人と同等の待遇、巡回指導の受け入れなど受入企業がしっかりと受入計画を作成し、その審査を国交大臣が行い、その上で入国審査に移るという流れです。
 受け入れのパターンには、①海外訓練+日本語能力試験、②日本語能力試験のみ、③試験なし(技能実習・建設就労からの移行)の3パターンがあります(図2参照)。
 さて、今回の受入体制の構築にあたって特に重視したのが特定技能外国人受入事業実施法人である一般社団法人建設技能人材機構(JAC)の設立です。
 これは日装連をはじめとする関連団体が共同で立ち上げた団体で、アウトサイダーやブラック企業の排除、失踪や不法就労の防止など、外国人を受け入れるにあたって発生するであろう諸問題を業界あげて対応することを目的としています。
 特定技能外国人を受け入れるためには、機構の正会員である団体の会員であるか機構の賛助会員になる必要があります。
 日装連組合員の皆さまは特定技能外国人の受入企業になれます。
 同機構の立ち上げには、参画された業界団体に多大なご負担いただきましたことから、そこに所属する方々のプラスになるような形で進めていくつもりです。ぜひご活用いただきたく存じます。



 
 

 

建設キャリアアップシステムについて

 最後に、建設キャリアアップシステムについてもご紹介します。今年4月のスタートで現在約5万人が登録しています。
 これまでの建設業のイメージを変えたい、このカードを持っている職人は経験と技術がある、就業履歴が蓄積されれば処遇が良くなる、誇りがもてるというものにしていきたいと考えています。
 外国人についても、特定技能外国人だけでなく、技能実習生も建設キャリアアップシステムへの登録を義務付ける方向で進んでいます。
 外国人もこれからは奪い合いになります。ヨーロッパやアジア、そして日本国内でも他の業種との奪い合いです。その競争に勝っていくために、日本人だけでなく外国人の処遇も良くしていかなくてはなりません。
 日本の建設業界において、平成の30年間は大変な時代でした。当初は処遇も悪くありませんでしたが、みるみる悪化していき、若者が入らない業種になりました。
 建設技能者が誇りを持って、経験と技能に見合った処遇を受ける。そんな当たり前のことを建設キャリアアップシステムを通じて実現させたいと思います。
 問題点も多々ございますが、皆さまのご協力をお願い申し上げます。